kikka hirado

Book Direction|
kikka hirado

Kikka hotel library

長崎県平戸市にできた全5室のホテルkikka hiradoのためのライブラリー「海と翻訳 / Sea and translation」。

選書テーマ:翻訳と沈黙/海とわたし/長崎平戸

長崎、平戸の海は土地の人々を包み、人々の糧となってきた。かつてはキリスト教と西洋文化が入ってきた日本の玄関であったと同時に、その浜辺は時代の犠牲となった隠れキリシタンにとっては悲劇の場でもある。

言葉の違う異国の文化は、日本の言葉や状況に翻訳され、咀嚼されながら日本文化のなかに組み込まれてきた。平戸には、仏教とキリスト教が同居する風景や、日本独自の洋菓子として平戸から全国へ広がっていった砂糖とお菓子の文化がある。「I LOVE YOU」を、夏目漱石は「月が綺麗ですね」と訳し、二葉亭四迷は「死んでもいいわ」と訳したという逸話があるが、自分たちなりの言葉や表現に翻訳し、置き換え、伝えつづけてきた文化、言葉、歴史、祈り、愛の原点が平戸にあるような気がする。

kikkaの窓に向かえばそこには海が広がる。何百、何千年も前からその姿を変えずにある海だが、太陽や月の光によってその時々の表情が変わっていく。何も言わず私たちを受け止めてくれる海。異文化のはざま、混淆する場、波打ち際のような平戸。

kikkaで過ごすいつもと違う時間。いつもと違う言葉で世界を捉え、違う目で海を眺め、普段言えないことが、いつもと違う行動や表現で伝えることができるかもしれない。

海と翻訳、そして平戸の魅力を通して、日常の忙しさから離れ、新鮮な自分と出会いなおすためのライブラリー。

Information

Year

2024.9

Architecture

佐々木達郎建築設計事務所

Photography

須藤和也(ディスカバリー号