CASICA(BOOK DIRECTION)
「生きた時間と空間を可視化する」
価格やブランド、時代や地域を超えて様々なものを集め、新鮮なスタイリングで見せるセレクトショップCASICAのためのブックディレクション。CASICAでは薬膳の視点でフードを提供し、家具の修繕なども行っている。
“民藝や手仕事、作者の知名度や価格、新品か中古かといったタグ付けで役割を決めるのではなく、生きて暮らしていくなかで、皆さんの時間と空間にどんな作用を及ぼすことができるのか”を基準に物を揃えた場所に置く本は、物の来歴を辿るものや職人の業やものづくりの哲学を知るためのものなどをはじめ、物と長く付き合うとはどういうことか、暮らしにおける物の意味とは何かを問うものを選んだ。自由にスタイリングされた物に対して、その物たちのおもしろさや歴史を深く知ることで見つかる自分なりの価値を探求できるようなものとしての本である。
本棚のデザインも一緒に考えている。天高もかなり高く、広いお店に通常考えられる本棚では空間的な寂しさや本棚としての平板化を避けられないと考え、本棚としての実用性は低いが、お店全体と調和しながら違和感も生み出すようなやり方として、お店の商品の棚を様々に積み上げてランダムな大きさの本棚とした。本がショップにおけるディスプレイで終わるのではなく、見つけるよろこびを楽しんでもらいながら、手に取ってもらいたいという思いもあった。
棚だけでなく、物を新たな視線で見つめるため、もしくはいまある視点を深めるため、物と本をいかに関係付けるかも意識し、広い店内の置く場所やディスプレイにまで検討を加えている。