DAPPLED HOUSE
Book Direction|
考える素、感じる素、会話の素、共有する素としてのライブラリー
1987年、バブル時代に建てられた元レストランの4階建てビルの全棟改修が行われ、1階をレンタルキッチン、2階と3階をベンチャー企業のショールームとシェアオフィス、4階をオーナーのプライベートラウンジとなった。そのプライベートラウンジのために選書したブックディレクション。
ラウンジは、ワイン好きのオーナーが人を招き、寛ぎながらワインを楽しむ場所として使うことを想定されていた。オーナー自身の蔵書を使用するのでも、自身が選ぶのでもないライブラリーとして、オーナーの趣味そのものから選ぶのではなく、インタビューをして聞いた好きなことを抽象化し、選書の核としていった。「心と体の素」「おいしさの素」「美意識の素」「文化の素」というセグメントを設け、具体的な対象物ではなく、そうしたものに至る何かの「素」となるようなライブラリーを目指した。
例えば車が好きというオーナーに対して車の本は選ぶのではなく、なぜ車に乗ることが好きなのか、どんな車が好きなのかと聞いた。車と一体化したような走行感、特にカーブを曲がる時の感覚がとても好きという言葉が印象に残った。医療関係の仕事をしていうことも踏まえ、そこから身体と空間の関わりや身体奏法をはじめ、タトゥーやコム・デ・ギャルソン、攻殻機動隊まで様々な身体にまつわるものを中心に選書。ワインはワインそのものではなく、ワインを育てる土とは何か、ワインを表現する言葉についての本を選び、人それぞれ異なる“おいしい”をいかに表現し、共有するかを共に考えていけるような場としてのライブラリーとなった。